揺れる、山茶花




しかし話してる内に馬鹿馬鹿しくなってきた。
随分くだらないことで頭を悩ませていたと気付く。

昨日、自分の不甲斐なさが全てを占めていたのに。

今はもう、山茶花の甘い匂いと赤鼻の柔らかい声しか感じない。

「七回かぁ。ラッキーセブンだね」

赤鼻はちょっとおかしい子だ。
私が言いたいのはそこじゃない。

言うことも見た目も雰囲気も、浮き世離れしている感じがする。

どこがどのように浮き世離れしているのか詳しく説明しろと言われても、うまく言葉に出来ないことは確かだけど。



「いっぱいいっぱいになって、いろんなこと、見落としちゃう時が、あるよね」

人間よりずっと柔らかな空気で、赤鼻は小さく微笑んだ。

その表情はどこか達観していて、能天気扱いしたことを少しだけ反省する。


「そうよね」

誰もが、傷つかずに生きてくなんて、無理だもの。

「大事なことは、そんなことじゃないのに」

いっぱいいっぱいで、視界が狭くなっちゃうよね。

まるで私に誂えたようなことを言う。
その微笑も、全部、私のために在るように。





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