揺れる、山茶花
―――だからだろうか。
私の頭をゆるゆる撫でるその手を、素直に受け入れてしまったのは。
「お姉さんも、少しだけ一休みしてみたらいいよ」
ね、山茶花もそう言ってる。ほら。
足元に落ちていたくすんだ花びら。
赤鼻の短い指で運ばれたそれは、私の鼻をそろりと撫でる。
甘い、でも甘くない芳香が、やんわりと私を促していた。
ほろほろと零れていく香りが瞼を辿り、唇に触れた。
甘い花びら。
赤鼻に促されたまま、それを食む。
植物の青臭さしか感じない筈の舌が、仄かな甘味を得たなんて、それは。
秋晴れの下。
私は名前も知らない男とそれから山茶花に、慰められている。
目の前が真っ赤だ。
柔らかな赤。
優しいあか。