揺れる、山茶花





「…私のこと、心配してくれていたのだなぁ」

しみじみと吐き出した私を赤鼻が笑った。

「お姉さんが思ってるよりずっと、世界は優しく出来てるみたいだ」

クスクス。
囀るように笑う。

赤鼻の穏和な空気は、それだけで世界を優しくするのだ。


優しい優しい赤鼻。

えくぼの可愛い赤鼻。

今まで付き合ってきたどの男より甘いキスをくれる赤鼻。

赤い花びらが散る悲しさと儚さを、手を出さずに見守る赤鼻。



「お姉さんの笑ってる顔が一番好き」


お姉さんの笑顔が、僕の世界を優しくするから。





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