揺れる、山茶花




「赤鼻」

その骨ばった肩にすり寄れば、優しく優しく、頭を撫でてくれる。

世界中の棘から、私自身の黒い感情から、守るように抱き締めてくれる。

絶対的な私の領域。
それを赤鼻は、無条件で作り出してくれる。



ねぇ赤鼻。

本当の名前はなに?

兄弟はいるの?

私と会ってない時は何をしてるの?

年は幾つ?

…ねぇどうして、私にキスするの?





「いつも、挫けそうになるの」
「大丈夫、お姉さんは、挫ける度に、強くなる人だよ」

ねぇ。

「がむしゃらにお金ばかり稼いできたけど、家の財布を助けることに専念してきたけど、でも私が本当にやりたいことってなんだろう。目指すものがなんにもなくて、不安になるの」
「焦らなくていい。そうやって不安になるのはお姉さんだけじゃないよ。みんな色んな悩みを抱えて、葛藤して、時には躓いて、どうしようもなくなる。でも人間は、それでも前に進む生き物だから」


ねぇ、赤鼻。


「先のことを考えると、見えない闇に押しつぶされそう」

貴方が居なくなることを考えただけで、泣いてしまう私が。





< 25 / 40 >

この作品をシェア

pagetop