揺れる、山茶花
「あ」
某株式会社からの手紙。
薄茶の封筒には、私の名前が少々乱雑に縦書きされている。
ビリビリと破った封筒の中身には、予想した通りの採用通知書。
真っ白の印刷用紙の中央。
明朝体で印刷された文章の中の、
「採用」
の文字。
その日はお赤飯を炊いた。
赤鼻。
私、頑張ったかもしれない。
合格通知が夜に届いた為、私は次の日の朝、赤鼻に報告しに行った。
まだ太陽が支配しきらない朝の空気が優しい。
生まれたての空気が、私を後押しする。
「赤鼻」
朝露に濡れた山茶花の隙間から、赤鼻が見える。
「お姉さん」
最初から私が来ることを知っていたかのように、赤鼻は驚きもせずに私を迎えた。
あの、甘い笑顔で。
「赤鼻!」
朝の挨拶もせずに、赤鼻の大きな胸に飛び込んだ。
暖かい。
赤鼻の長い腕が、私の頭をそっと包んでくれる。
優しい。
何も言わずに抱擁を求める私に、
「おめでとう」
一言。
とても柔らかな、マシュマロみたいな甘さで、優しく。