揺れる、山茶花









楽しいなーとか、でも辞めたいなーとか、色んなこと考えながらも仕事を続けて、楽しいことやりたいこと一杯して人生を謳歌しよう!






そう思った矢先、私はリストラされた。


私がそれを理解する間もなく先輩から手渡された整頓用のダンボールが、腹が立つほど軽くてベソをかいたのを覚えている。

やりたい事などひとつもやれないまま、失意のまま私は会社を追い出された。



(…なんで辞めさせられたの、私)


何度も繰り返した自問自答。

考えたところで、企業さまの意向なんて知る由もない。

雇って一年と経たない新入社員は、そんなに使い物にならなかっただろうか。



(…でも、そんなんじゃなくて)

一番、悲しかったのは。




『…お世話に、なりました』

会社を去る当日。

表向き自主退社扱い、ということもあり、各部署に挨拶回りをして、自分が世話になった部署の人間には特に入念にひとりひとり挨拶した。

優しく指導してくれた先輩や上司、たまに厳しいけれど、仕事について熱く語ってくれた部長達。


悲しいけれど苦しいけれど、がありがとうございました、お世話になりました、って伝えたかった。


そう、言いたかったのに。







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