揺れる、山茶花
信用できるものはなんだろう。
キスしてる間は、不安も欺瞞も入り込まないくらい満たされているのに。
でも。
それだけで満足できるほど私は子供じゃない。
私達の関係はなんだろう。
可愛い赤鼻。
秘密ばかりの赤鼻。
ただ、素直に愛しいと思えるのに。
「赤鼻」
呼べばほら、私の大好きな微笑を与えてくれるのに。
「赤鼻」
強請れば、幾らだってキスを抱擁をくれるのに。
私にとって赤鼻はなに?
赤鼻にとって私はなに?
問うには余りにも私は意地っ張りで、赤鼻は純粋だった。
「あんた、最近は無駄に元気ねぇ」
母がしみじみとそう口にする。
反して赤鼻は、どんどん口数が少なくなっていった。
それから山茶花も、枯れ始めている。
───これから誇る筈なのに。
赤鼻はまるで山茶花と同調するように弱っていった。
けれど私はそれを追求する前に、仕事にくれる毎日に引き込まれていく。
『私ね、後悔することが一番嫌いなの』
あのやるせない感じ。
考えても悩んでも、いい方向に向かない陰湿な感じが嫌い。
以前、赤鼻にそう零したことがある。
───そうなの、赤鼻。