揺れる、山茶花





「赤鼻…」

頭がおかしくなったのだろうか。

この枯れた憐れな山茶花が赤鼻に見えるなんて。

赤鼻の、柔らかな髪とは正反対の硬い枝葉。

───愛しい愛しい、私の赤鼻。



かさり、かさり。



「…っ、」

目の奥が熱い。
視界は既に、体内から滲み出た液体で霞みががっている。

かさりかさり。

───赤鼻の声がする。

かさりかさり。





『お姉さん』


赤鼻の、声が、する。


『───お姉さん…』

鼓膜に染み着いた声が蘇ってるのか、この枯れ果てた山茶花が、語り掛けているのか。

(あぁ、馬鹿馬鹿しい、のに)

この山茶花が、赤鼻に見えるなんて。

植物を、人間とすり替えるなんて。


それなのに。

触れた指先の山茶花が、酷く。






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