甘食系男子





謎の叫び声を残して彼女は教室を走ってでていってしまった。

持っていた弁当を床に落として、手で顔を覆いながら――。


残されたオレは、再び1人このいたたまれない空気の中に身を置くことになってしまったのだ。






「……」



沈黙が、重い。




グー…
「腹へった…」

バシッ
「いて」


正直なオレの腹の虫が鳴り、とりあえず昼食を続けようとパンに手を伸ばした瞬間、和紀に頭を叩かれた。


「阿保かお前!今すぐ弁当持って追いかけろ!!」


「えー…」


バシッ
「いて」

「オレだってなぁ、お前なんかよりオレ様を選べって宮古塚さんに言いてえよ!目を覚ませってな!!!」


お前が目を覚ませ。


涙を浮かべながら力説する和紀を見て、オレは嫌々、重い腰を上げた。

別に和紀の言葉に動かされたわけじゃない。あいつがオレの菓子パンを泣きながらすべて食べてしまったからだ。

メロンパン数口では空腹は満たされない。




「早く行きなさいよ佐藤!!あんたなんか姫に見捨てられたらただのもっさい男子よ!」

「姫ならきっと屋上だわ!あそこからの景色がお好きだって前聞いたから!」

「決めろよ佐藤!」

「午後の授業は上手く言っとくからな!」
「その眼鏡どこの店だ!」

「抱きしめてキスよ!!」




右手には風呂敷。
左手はポケットに突っ込んで。

クラスの連中への殺意が湧くのを感じながら、重い足どりで屋上へ向かった。



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