甘食系男子
「お前…またこんなもん読んでるし…」
「こんなもん言うなあほ」
一が食い入るように見つめる雑誌には、色とりどりのフルーツで飾られた可愛いスイーツたちが載っていた。
「このページのイチゴタルトのレシピがさ、アーモンドクリーム使わないんだよ。タルト台を焼いて、カスタードひいて、苺。みたいな。でもやっぱさ、苺タルトはアーモンドクリームがないと8割くらい損して…」
「だーっ!!意味わかんねーよ!つーか黒縁メガネかけて寝癖爆発してる奴の口から出る言葉じゃねーだろっ」
早口でまくし立てるように言うと、一がしょぼんとした目で見てくる。
伸びた前髪とダサ眼鏡で目はほとんど見えないけど、なんとなくだ。雰囲気雰囲気。
「和紀…」
「…なんだよ」
――言い過ぎたか?
「人を判断するのが見た目基準なんて、哀れだな」
ブチッ
「おっ…お前に哀れまれたかねーよっ!」
周りで和紀がギャーギャー吠えても、一は気にする気配もなく、飄々としていた。