甘食系男子
来た時と同様に走って教室を出て行った少年を見送ると、一は早速菓子パンの1つに手を伸ばした。
「…いつから千紘はパシリになったんだよ」
和紀は相手にされないと分かって、切り替えが早い。
「残りの金でチョコボール買って良いよって言っただけ」
「餌付けかよ。
「聞いてるだけで胸やけ…」
「心配しなくても和紀にはあげないよ」
「……」
メロンパンを頬張りながらもくもくと雑誌を眺める一を横目に再び大きなため息をついた。
「本当になんでお前なんかがいいんだろうなぁ…
宮古塚さんは」
「その名前を出さないでくれ」
「佐藤くん」
自分を呼ぶこの声に、それまで和紀に何を言われても無表情だった一の顔に一瞬で焦りが現れた。