甘食系男子
「あ、宮古塚さん!こんにちは!」
「あら、ごきげんよう。」
和紀が絶望的なアホ面で女子生徒に挨拶をする。
因みに和紀が彼女のことを『姫』と呼ばないのは、自分が他の生徒より彼女と親しいことをアピールするためらしい。
「……何か」
ずり落ちた眼鏡を中指で戻しながら聞いた。むろん、目は合わせない。
「あの…私、佐藤くんにお弁当を作ってきて…それで、その、」
――あぁ、手に持っていた巨大な風呂敷包みは弁当だったのか。
そんなことを思いながら激しくシャッフルされているそれを見る。
――…ん、シャッフル?
「えっと、もし良かったら…」
顔を伏せて身を左右に振りながら(モジモジしてるのだろうか)話す彼女に抱えられたお弁当は、当然ながら左右に一緒に揺れて中から凄まじい音がする。
「うわ!すげえ弁当!羨ましいぜほんと」
そう言ってアハハと笑いながらも和紀の足は机の下で正確にオレの左足に振り落とされた。
いっそ代わって欲しい…。
「あ…全然大したものは作れなかったんだけれど…」
「なに言ってんすか!ほら、一有り難く受け取れよ!」
背中をバン!と叩かれる。
「………
いや、オレ飯あるし」
「「え?」」