紅色の永遠
「あらまぁ」

頬に触れた朧気な温もり。

老女の顔を見ようと瞼を必死で開くが、何故か霞んでしまってよく分からない。

色彩が入り交じり、ゆらゆら揺れる様は水鏡のようで。

頬に温い液体が伝って、瀬遥は始めて自分が涙を流していると知った。

「‥めっ‥ごめ、んなさ‥」

反射的に謝る瀬遥の頬を、老女が撫でる。

「いいのよ。泣きなさいな。

自分の素直な感情を出さないでいると、心がいっぱいになっちゃうから。

だから、泣いていいのよ」

それを聞いた瞬間、瀬遥の瞳から細流が生まれた。

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