紅色の永遠
ぎこちなく振り返ると、彼女の視線の先には日傘をさした白い服のおばあさんが一人。

見覚えがないのか、彼女は小首を傾げて老女に問う。

「私‥ですか?」

「えぇ、そうよ」

「何か、ご用ですか?」

些か不審げに、彼女は再度尋ねる。何者かわからない人に声を掛けられたら、みな同じ反応をするであろう。

「あらあら」

その問いにおばあさんは上品に笑った。彼女の態度はまるで気にしていないようだ。

しわをいっぱいにして笑う老女の姿。きっと若い頃は、それはそれは素敵な女性だったのだろう。

それが、女性の脳裏に引っ掛かった。‥誰かに似ているような気がする。

眉を潜め、彼女は思案する。


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