君のとなり
そんな沙希は、雅樹くんからのお呼び出しで帰っていった。
今日は慧子は休みだから、1人で授業を受けた。
たまには1人ってのも良いもんだな、なんて思いながら。
唯一、1人で嫌だと思うのは帰り道。
でも今日はそんな帰り道も、何だか嫌じゃなかった。
「ただいまー」
真っ暗で誰もいないと分かっていながらも、家に入ると言ってしまう。
自分の部屋に入ってすぐに、誰かが帰ってきた音がして。
たぶんお兄ちゃんだな。
念のため、部屋の時計を見て確信を得る。
トントントンと階段を上る音がして、その足音はアタシの部屋の前で止まった。