*蒼空色Diary*

情けない。

泣きながら謝るなんて。



あたしが悪いんだから、ちゃんと謝らなきゃいけないのに…



「……ひっく……ぅ…」



…そう思うのに、目から零れる涙が止まってくれないのは何故なんだろう。



「……っ…ごめっ……」


ほら、冬矢翡翠も御堂凪も目を見開いている。


「焼きそば…サンドっ…クリーニング代もっ…ちゃんと…払う…からっ」


こんな奴の前で泣いたって、しょうがないんだから。


「…っ…ごめんなさ…」


泣くな。泣くな。



「…ぅ………っ…」


「…………おい」


不意に、冬矢翡翠が声を発した。



「………っ…？」


肩をびくつかせながら顔を上げると、



ペシンっ


「たっ…」


何故かおでこをはたかれた。


地味な痛さに眉をしかめれば、上からため息まじりの声が聞こえる。



「お前いったい何なんだだよ」


「…………う？」


「何者だって聞いてんだ」


「…………え？」


「ここにやすやす編入するなんて、相当な額の寄付金や権力持ってなきゃ無理だろ」


「…………あの？」


「俺に対しても生意気な口ききやがるし、どこのご令嬢かと素性掴んで追い出してやろーと思ったら」


「……………」


「お前に関する情報が、どれだけ探しても手に入らない」


「え…じょうほ…？」


「“夏井杏樹”って名前すら出てこない。お前何者なんだよ」



冬矢翡翠の薄い唇からはきだされる言葉達に、あたしはただただ呆気にとられるしかなかった。