*蒼空色Diary*
「お祖父ちゃん、杏樹達来たよ」
由里亜がこちらを向いて手招きしたので
「失礼します」と声をかけてから足を踏み入れる。
わっ……
部屋に入るといきなり空気が変わった。
空港や街やこの建物内では大勢の人が行き交いしていたせいか、なんとなく、時間に追われているような気がしていた。
けど、この部屋だけは時間が流れていないような、そんな静かな空気を肌で感じる。
「杏樹さん、ユアン君、よく来たね。
君達に会えるのを楽しみにしていたよ」
「お久しぶりです。これからお世話になります」
由里亜のお祖父様はゆったりとした動作であたし達に声をかける。
「2人とも遠いところからよく来たね。今日はゆっくり休みなさい」
「え、でも…」
手続きとか…
「今の日本はゴールデンウイークに入ったばかりだから、学校が始まるのはまだ先なんだよ。
だから手続き等の話はそんなに急がなくてもいいからね」
あたしが言おうとすることがわかったらしい由里亜のお祖父様はニコッと笑うと、由里亜に視線を移した。
「手続きの話は明日にしよう。
由里亜、2人を部屋に案内してあげなさい」
「はーい」
由里亜はそう返事をすると、あたしの手を引っ張って部屋から出た。