月の衣

訪れ


闇にまぎれて、影が動く
誰も気づかず
漆黒の中

一人、逝ってしまった
何も告げず
何も語らず

ただ一人、逝かせてしまった
励ましも、気休めもなく

その夜は
なんと静かに訪れたことだろうか
あの年老いた父親と
無表情な白衣の天使と
そのかたわらには死神が
斧にやすりをかけていたのだろうか

闇は確実に時を進ませ
横たわる青白き体から命を奪う

なぜ気づかなかったのだろう
なぜ足を遠ざけてしまったのだろう

夜は神も眠るのか
天使はどうか

悔恨と脱力
ゆがんだ気持ち
心に巣くう闇

そして許せぬ未熟
許せぬ時
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