都の春
「春香に逢いたい」
『……お前…
帝の后に、』
「わかっている。
帝の后に手を出す事は、
逆賊の所業だ」
『何故?』
「今、私の屋敷に一人の女人がいる。
屋敷の人間には、某大臣家の妾の娘を匿っていると偽っているが…」
『現世のものでないんだろ?』
やはり、木部誠涼は凄かった。
「お前に嘘はつけないな。
その娘、春菜が春香に逢いたがっている。
私は今、春菜を愛している…
彼女はいずれ、現世に帰る。
それが天命なら。
だが、春菜が春香に逢う事を望んでいる」
『俺にどうしろと?』
「私が重病と偽ってくれ。
そして、家族を集めて祈祷が必要と言ってくれ。
お前の予言なら皆、従うさ。
そして、私は春香に文を書き、里下がりを頼む」
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