恋に恋してる
結婚式の当日。ちょうど決まったバイトも休みで、予定も何も入らなかった。
知り合いがいない結婚式とはとてもいずらい…式は少し出て帰るつもりだった。

服は川上からもらった薄いピンクのドレスと白いピンヒールのサンダルを着て行った。

色々なことを思い出した。もう忘れなくてはいけない思い出だ。

会場は海が見える教会だった。私も結婚したらこんなとこがいいな、と想像した。
山内の奥さんは純粋無垢で、綺麗だった。
とても2人は幸せそうで、心がやわらかくなった。
山内をもう恨んでないし、憎んでない。
亜美の最後の言葉は私だけが知っている事実だった。
亜美は山内の子供を授かっていた。うれしいと言っていた。
許す時が来たのだ。

式が一通り終わりを迎えるとお手洗いに行くふりをし、外に出た。
空は真っ青で秋の色をしていた。
海沿いを一駅歩くことにした。さざ波が心地よくこの時期にサーフィンをしている人もいた。

日本なんて知りつくしたーと思ってたけど、まだまだ知らない世界はありそうだな

そう海を眺めた。


遠くで人を呼ぶ声が聞こえた。視線を追っていく。
遠くからスーツの人が歩いてくる。

すぐにわかったよ。

かわかみゆうと。

はっきりと私の名前を呼んで近づいてくる。涙が溢れて止まらないんだ。
私の憧れがあそこに居て、今私の名前を呼んでいるよ。





もう会えないかと思ったよ


かわかみゆうと。


私の愛する人。
< 94 / 95 >

この作品をシェア

pagetop