星の至宝〜神々の唄〜
まだ笑いを残しながらも、やっと納まってきた男は、今度は目をキラキラさせて聞いてきた。



「ねえ、君なんて名前?」


そんな表情をしてずいっと顔を寄せられれば大抵の女性はドキドキしてしまうが、マリーは身近にシリウスという美形がいたので、全く何も感じないままに答えた。



「マリーです」



男は内心、自分の容姿にまったく興味を示さないマリーをおもしろく思いつつ、さらに質問を続ける。



「マリーちゃんね。それにしても、なんで斜面なんか登ってきたの」

「…靴が」

「靴?」

「靴がこっちを指したから」



そうマリーが唇をとがらせつつ言うさまと、その子供じみた行動に再び笑いのこみ上げてきた男だったが、ここで笑えばさすがに気分を害してしまうだろうと思い、なんとか腹筋を総動員してこらえた。
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