星の至宝〜神々の唄〜
それからは、ぽつぽつとお互いの日常を話し合った。



「給仕長がまたおいしいワインを手に入れたらしい」

「料理長が新しいお菓子を考案して、どうもそれが女たちに受けているらしい」

「門兵のディミトリという男が彼女に振られたらしい」



など、兄から出てくる話は噂話だけであったが。


こうして何気ない話をしていると、カイは束の間、肩から力が抜けていくのを感じた。


互いのことを話し尽くし、気詰まりではない沈黙が辺りを支配していた。



「さてと…」



兄がそういいながら立ち上がるのをカイは黙ってみていた。



「そろそろ城に帰ることにするか」



うんっと背伸びをしつつそう言った兄に、カイは「そうですか」とだけ声をかけた。



< 96 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop