星の至宝〜神々の唄〜
兄は、「また来る」とだけ言い、あっという間に姿を消してしまった。


おそらく、またしばらくは会えないだろう。


もう兄を恋しがるような歳でもなかったが、やはり偶にしか会えない肉親に会うというのは、自分に安らぎを与えてくれるようであった。


久々に与えられた安らぎに、しばらくぼうっとしていたカイだったが、自分もやるべきことを山ほど抱えている身。


ひとつため息をつくと同時に、ベンチから立ち上がった。


そして、先ほどから自分にそろそろと近づいている影めがけて、足元にあった小石を蹴り上げてぶつけてやった。



「いてっ!」



上手いこと小石があたったのだろう。声の主は頭をなでながら木陰から出てきた。



「おいおい、久しぶりに会う友人に対してこれか~?」



大きな身体に、がっしりとした筋肉をつけた男は、その見た目に反して音もなくカイに近寄ってくる。



「煩い。気配を消そうとするお前が悪い。」

「いや~、我らが東王がこれしきのことで気づかないはずがないと思いましてね~」



全く自分を敬う様子を見せない男に、カイはくくっと笑いを返す。



「仮にも第二師団の団長ともあろう者が、こそ泥のように忍び寄ってくるとはな」



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