蛙の腹
第5章 羽のない蛙
時刻は十八時半をまわり、所持金も二千九百五十円となった。
次第に寂しくなってきた。

携帯電話に女友達からのメールが届いた。
「仕事終わったら久しぶりに合わない?」と簡単なメッセージ。
「二十二時ぐらいなら、大丈夫?」と返事を返した。
「じゃぁ、二十一時に駅前で」とすぐに返信が届く。

そして電話がなる。母からだった。

「はいはい、なんね。」

改札口前。
人目を気にしながら、方言で電話にでる。

「幸則、まじめに仕事は頑張りようとね。」

「あぁ、ちゃんと心配せんでも行きようよ。」

自分が生きて親に妙な心配をついてもいい。

「なんね、あんた外におるとね。まだ仕事ね。」

「あぁ、今電車に乗るところたい。もう電車が来るったい。なんか用事あったね?」

「いや、家にお父さんもおらんけん。あんたに電話しようとたい。まじめに働きようならよかたい、また電話しようかね。あんたもたまには電話してこんねよ。」

「はぁい、また忙しくないときにゆっくり電話するけん。ほんならね。」

電話を切る。
電話を切るタイミングほど、現実が白けたようにむなしいものはないと思う。

改札をくぐり、ホームを歩きながら、幸太に電話する。
2回目の電話でようやく電話に出た。

「幸太です。どうした?」

「もしもし。俺。仕事どう?まだ仕事中?会社の近くまで行くから少しなんか一緒に食べようよ。」

「あぁ、いいよ。どのぐらいでこっちにこれる?」

「三十分ぐらいかな、駅についたらまた電話するよ。」
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