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ドラマでの
アンタの演技が酷評だったの、
噂にでも聞いてるよな?

人の事を"素人"ってさあ・・。


「・・・OK!」

「えっ??」



驚いたのはそこだ。
微笑まなきゃいけないシーン・・

俺が一番心配してたトコだ。
それが、一発OKだったなんて。

シアが・・
目線位置で微笑んだんだ。

まるで飛んできた王子が
見えたみたいに。

後のモニターで
それをはっきりと見た。


「サイコー
可愛い親指姫が撮れたよ。」


戻って来たシアに
年期の入った顔を緩ませて
親指を立てる監督だった。


「有難うございました・・!」


そう云われただけで
もう赤面してお辞儀。
また元の彼女に戻っちまったが。


「スゴイじゃん!
あたし、あの監督にあんな事
言われた事ないよ~!?」

「・・ぅえっ!?」


顔を上げるといきなり、
美優がそこに居たコトと、

彼女がそう云って
手を握ってきたコトに驚いてた。

厳しい事でも知られている人だ、
正直、俺でさえも驚いている。

そのPVを後に見た。

親指姫のシーンが他の姫より
カット数が多く、
あの女はワンカットしか
映ってなかったのには笑った。

そこに
監督の私情を見た気がする。

そんな裏話は
光の如く知れ渡る業界。
実際に興味ある
コンタクトもあったらしく。

前の経営陣は"勿体ない"から
積極的にシアを
説得しましょうと云ってる。

シアの扱いはアクマでバイトだ。

だが、今の事務所的には
シーグラス社の品位を貶める
仕事は請けさせないとしてる。

俺は何か不自然さを感じていた。

幾ら大企業だからって少し
彼女自身のイメージを
庇護し過ぎの様な気がしたんだ。

ある日、たまたま
事務所に寄る用事があり、
部屋に居た専務に訊ねたんだ。



「会長は何か知っておいででは?」


彼自ら俺にコーヒーを入れて
ソファに座るように促すのだ。


「貴方は彼女に一番近い存在だ。
彼女を知る勇気はありますか?」


専務以外の顔をした彼に
俺は躊躇わず即答していた。


「____ 勿論。」













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