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シーグラス・ジャパンと
云う名を背負っている以上、
仕方なかったのか。

彼は引き出しから
「調査書」と云うコピーを
手渡したのだ。

彼女の経歴を調べていた・・。


宮田史亜、
結城姓は母方の名だ。
離婚すると
その子供はどちらの名を
語るのも自由だから。

酷いものだった、読んで行く
うちになぜ会長が彼女を
可愛がるのか解る。

火事の話もほぼ同じ、
両親がどんな人間かも解った。

父親は家庭を顧みない
優秀な商社マン、
母親は派手な遊び好きの主婦。

シアが云った通り、彼女は
不倫の末に出来た子だった。

家に帰らない両親、
母親はシアが生まれて直ぐ
育児放棄。

シアに関しては殆ど
家政婦さんが毎日
住み込みで育てている。

溺愛していたのは兄のみ・・。

火事の後、更に彼女を
追い込んだのは母親だった。

当時の看護婦の証言によると
全身打撲、熱の下がらなかった
病床の彼女を
買って来たばかりの
果物ナイフで?


「もう・・いいですよ・・。」



俺はそれ以上
読めなかったんだ。

あの首の傷が
心の傷になったのは・・
当たり前だ。

なぜ生まない選択を
しなかったのか?

シアは云った。
父に対する腹いせだと。

その父は火事の後、
彼女に仕送りだけして
再婚に走る。
前から女がいたらしい。

そして母親はその後直ぐ
精神に異常をきたし
車で排ガス自殺を図る。
今や廃人状態で入院中だ。


「会長は全て
お知りになった上で、
シアさんをお選びになり、
そして私をお付けになった。


「え・・?」


「私はシーグラス社にある
施設の、心理カウンセラー
主任でしたから。」



大企業では健康相談室を
設置している所があり、
そうした施設に勤める
心理カウンセラーは
今や少なくない。

彼は今回の買収に辺り、
ここの専務に抜擢されたのだ。
良い人選だったと思う。


「シアさんは
PTSDを抱えている。
薄々・・貴方も
気付いていたのでは・・?」




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