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「・・・憶測で。」


PTSDとは
心的外傷後ストレス障害。
今や知られた名前だ。




錯乱する彼女が見ているのは
フラッシュ・バックでは?


看護記録では・・
母親による事件後、
目覚めても何日かショック
状態のままピクリとも動か
なくなってしまったそうだ。

ナース達も油断していた為、
病院を抜け出せたんだろう。


「だが、ここまで回復する
なんて素晴らしい事ですよ。」


殻に閉じこもったりして、
人と付き合う事が困難になり
通常の社会生活が送れない
ケースも多い。



「無理は禁物って事ですね」

「ええ、そう云う事です。」



会長の好意で
そうしてくれるのなら有難い。

彼に言わせれば、
彼女はまだ若い。
けして遅すぎる事は
ないんだから・・。


それにシアは少しずつ、
人前で
微笑む事を思い出している。

そうしたら、もっと
彼女の美しさは
眩いものになるに違いない。

俺はそんなシアが見たいんだ。
勿論、そう思ってるのは
俺だけじゃないだろうけど?


「・・その分、
僕がここで頑張りますよ。」

「その言葉を待ってました。」


シーグラス・ジャパンは
ここ数年、色んな慈善事業に
参加していたりする。

趣味だった馬や相撲の出資
にも飽きた金持ちの爺さんの
新しい道楽にしては
良い金の使い方だ。



「確かジュードさん達は明日、
久々のOFFでしたね。
何かご予定でも?」

「ええ、
これからキャンプです。」

「キャンプ・・ですか?」

「皆で、
お月見キャンプ。フフ。」

「?」



目をまん丸にした専務に
頭を下げ、部屋を出た。


パタンっ。


しーっ、て・・
事務所の奴らは揃って口に
人差し指を俺に向けるんだ。

その指先では、
待たせていたシアが机に
うつ伏して熟睡中だった。


[・・・・。」


懲りない女だ。
あの脇の下が俺を呼んでいる。



彼女の悲鳴に恩田専務が
部屋から飛び出して来たのは
云うまでもない。

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