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「シア・・何処行くの!?」


そうかと思えば、ハッとして
冷え切った手をそっと
腹の上へと置いてやってた。



「直ぐ行ってきますから、
少し待ってて下さいね。」



俺にものを言う様な、
仕事中のいつもの口調・・。

今、
シアは・・坂巻の付き人に
戻っているんだ。


彼女がスックと立ち上がり、
尋常ではない様子で
財布を取り出し
病室を飛び出してった。


サクヤと顔を見合わせ、
急いで二人で後を追って行く。

シアはジュースの販売機に
辿り着き、震える手で
お札を押し込んだかと思うと

HOTの表示の出てる
缶ジュースのボタンを
次々と押していくんだ。

受け口が詰ってしまう・・

俺は慌てて彼女と自販機の
間に割って入り、手を掴み
止めて押し返していた。



「落ち着いて! 何で・・、」

「放して! まだ、
いっぱい要るのおっ・・!」

「シア、解ってる。じゃ、
湯たんぽ借りに行こう・・な。」



サクヤは泣きながらそう云い、
後から彼女を止めている。

シアはまだ自販機に手を延ばし
猛進しながら首を2、3度振った。



「坂巻さんを早く・・暖めなきゃ
・・手も足も・・坂巻さ・・が、
冷たくなっちゃうよおぉっッ・・!」

「・・・!」

「シア・・。」


「やだっ・・! 早く放して!!
早く・・お願い、早く、早く・・!
あっためてあげるんだからぁっ!
放してぇっ、いやあぁぁッッ・・!!」



フロア中に響き渡る
あまりに悲痛な抗う叫びは

"置いて行かないで"

・・そんな
心の叫びでもあったのだろう。

どうにもならないなら
もっと・・、
しがみ付いて俺を叩けばいい。

サクヤと二人

子供みたいに泣き崩れる
シアを挟み
ただ、ただ、
抱きしめてやっていた・・。





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