+ missing-link +
その後、ジュードさんが
どのようにして専務を
口説いたのかは知らない。

不動産屋さんに行こうと
思っていた矢先、


「既に子会社へは
手配済みですよ。」


と、恩田さんから
携帯を渡す様に云われた。

不動産の会社まで
持っているなんて知らなかった。

少し都心からズレた、歴史的で
理想的に緑がある場所。

その閑静な住宅街にある
十階建の
シンプルな外観のマンション。

案内された部屋は
携帯が鍵になっている。



「・・広すぎやしませんか?」

「この部屋しか空きが
なかったものですから。」



ワンルームを想像していた。


メゾネットタイプの、
吹き抜けが解放感ある
比較的天井が高い部屋。


玄関のドアはキッチン前で左右に
リビング、反対側にダイニング
二階は寝室に使う事になりそうだ。

セキュリティも防音も万全、
おまけに
ペットもOKなのだそうだ。



「電化製品はだいたい
揃っていますから。」



家具は一切置いてないが以前、
会社の誰かが住んでいたのか。

荷物の搬入も
専務立会いで既に終ってた。

専務はリモコンを操作、TVが
映るか確認して頷いてる。

薄いテレビの裏のシールに
気が付いた。他の物にもだ。



「あの・・、専務。お気遣い、
有難うございます。お休みまで
頂いて・・申し訳ありません。」

「たった三日です。短いです
けど、ゆっくりお休みなさい。」

「では・・お言葉に甘えます。」



引越しの日は・・私が選んだ。
ジュードさんや、那須さんが
忙しくて来られない日を選んで。

だから、
シュラフを1つ借りてきた。

今日から此処で生活するために。



『会長様。

素敵なお部屋、
有難うございます。

お気を使わせて
申し訳ありませんでした。

結城史亜』



専務が帰られた後、
会長の携帯が圏外だったので
一応のメールもしておいた。

本当に良くして貰っている。

期待を裏切らないように早く、
立ち直らなければならない。

言葉で言うのも考えるのも
実に簡単ではあるが・・。






< 138 / 332 >

この作品をシェア

pagetop