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「私が母の目に映る時はね、
そんな時だけでしたよ・・。」



普段は兄しか見えないらしい。
ずっとそう解釈していた。

たまに家に帰っても母は私を
素通り、真っ直ぐ兄へ向った。

独り取り残される私を・・
哀れむジリさんや、兄の
悲痛な顔が今でも焼きついてる。



「貴方も私が
憎かったんでしょう・・?」

「ああ、そうだよ・・!」



血が繋がっていても、
愛してくれるとは限らない。

まして、他人なんだもの。
聞く方が間違っていた。

クスリと笑った私を不快に
思ったのだろう、また手に
力を入れたのが解った。



「1人も2人ももう同じでは?
終らせたらどうですか?
貴方の、その両手で・・。」




興奮していた彼が、私の提案に
一瞬ポカンとしていた。

顔つきが変わった。

"出来ないと思ってやがる"と。

追い詰められると人間、
何でもするものだと知っている。




「まったくだ・・。
今、楽にしてやるよ・・!
腹を切っても痛くない様にな!」


「グフ・・!」



ガッ、と力強く喉を掴んだ。

ジワリ、
喉に手が食い込んで来る・・。

ゴツゴツした指の骨を感じた。

苦しさを感じ始めて
気が遠くなる迄って案外長い。

妙に落ち着いて、
いろんな事を考えられるほど。


( もう・・死ぬんだ・・ )


狂気にどす黒く深い皺を作り、
ギリギリと歯を食い縛る
男の顔もだんだん霞んできた。


死神に取り憑かれたのは
また私だった。

生憎、母より早く。

ひょっとしたら
心のどこかでずっと、

過去から解放されたいと
願っていたのではないか・・?

でも、これでもう、
皆を巻き添えにする事もない。

この男を、本当の殺人犯にする
事も叶いそうだ。

やっと"私"と云う全てが終る。



白い世界が・・見えたと思った。



ジュードさん、ごめんなさい

たくさん愛してくれて有難う

大好き、でしたよ・・


みん・・な、・・も・・。

ラ、フィを・・お願・・い・・






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