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彼女に家族がいないので、
彼ら2人が兄貴になって
病室に入った。

看護師も解っていて
そこは大目に見てくれた。

個室のTVで見たニュースには
さっきの出来事が早速に報道
されており、俺も驚いている。

しかも彼ら2人が病院に
入ってくる時、もう何人もの
彼女のファンらしき男達が
わんさかと集まって来ていた。

今、テレビの実況でそれが
映っているのを指差した。


「シア・・? あれ見てみ。
皆、心配してくれてるんだ。
早く・・起きろよ・・な?」


手を握りながら、まだ熱を
持つ腫れた頬を摩ってやった。

記者会見では今じゃ雇われの
社長が事情を説明し、
専務が同席、質問に答えてた。

当たり障りのないように、
あの文面は恐らく
専務が考えたものだろう。
まだ安心して聞いていられる。

俺としては何も隠す事はない。

だが、シーグラスとしては
大アリだったんだろうな。

心配しなくてもこのカンジ
じゃ、ビクともしないだろう。

それに被害者であるシアに、
かなり同情的に報道されてる。

本人に取っては不本意だろう
けど、この場合はそれが良い。


ベッド脇に立った彼らも
涙を堪えながら
彼女に話し掛けてくれた。


「シア・・また屋上キャンプ
皆でやるんだろ? ジュード君、
那須も俺も・・約束だよね?」

「シーちゃん? ラフィが
待ってやるで。そろそろ起き?
ご飯あげやなあかんやん。」


「坂巻さん・・。」


俺がその名を出すと二人とも
が一瞬切ない目を俺に向けた。

たぶん・・彼らは避けたんだ。
だが、俺は敢えて云った。



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