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「・・・ヤベェ。」
「 ? 」
長いキスに酔いしれていた私を
すっかり自分の中に
取り込んでいた死神が呟いてる。
あの目でフッと微笑を浮かべた
後、直ぐマスクを元に戻した。
「見ちゃいらンねえな・・。
そろそろお前も戻らねぇと。」
腕時計のネジをキリキリ回して
いる。いろいろと、
時間調整が大変なのだそうだ。
「向こうは朝だ。
ナニゲにするんだぞ、何気に。
体の方も、健康な時の状態だ。」
「ええ、でも・・?」
手を取り、
上の段を1つ昇らせる。
彼は私がこう云うの苦手だって
知っている筈だったから。
「心配ねえから、そこに立って」
「ココで?」
「そう。こうだ。」
崖に背を向けさせて、
"ああ、イイコだ"なんて抱く。
まるで誰かさんみたいに。
小首を傾げ、見下ろしている
その仮面の中はどんな表情に
なっているんだろう。
外さないのは・・多分
寂しい顔はできないから。
「また会えるかって聞かねえの?」
「いずれ、また会うでしょう?」
「フフ、違いねえ。ハズレたら
そん時は当番代わって貰うわ。」
「予約、しましたから。」
「ああ。」
モヤの中、彼の足元から
ニュウと円柱が上がってきた。
その上にクイズ番組で押す赤い
ボタンみたいなのが着いてる。
「それは?」
「何だろな?」
「下界への扉を開けるボタン?」
「惜しい・・!」
「きゃっ!」
バシ!
彼がそのボタンを叩いたので
思わず笑おうとすると
ズボッ!
なんと足場がヌケたのである。
下へ下へと吸い込まれていく。
落下速度はまだゆっくりで。
彼の、マスクを取った笑顔が
上から覗いてる。
余裕もないクセに
私も引き攣り笑った。
「酷いですよ・・・!!」
シュボボボ・・と空気の音。
私は両腕を上げたまま。
そう・・足から掃除機の筒に
吸い込まれてる気分。
引力は弱から強へ。
「・・風邪ひくンじゃねえぞ! 」