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彼女が消えた翌日も
テレビのワイドショーは
彼女の事を取り上げ続けていた。

週刊誌なども一社が書き立てる
と、我も我もで記事にし始める。

探偵でも解るんだ、
ある程度の事なら調べ上げて
俺達の知らない過去の友人の
コメントまで掲載してやがる。

悪い事は書かれていないのだけ
が救い・・しかし耐え難い。

同情的に、彼女の不幸を
お涙頂戴狙いに纏めてあるのが
ミエミエで腹立たしい位だった。

俺の方にも
コメントを求めるマイクが
ここぞとばかり向けられたが

「そっとしといてあげようよ。」

そう一言云うだけに止めていた。


さすがにシーグラスとしても
全部、出版社をツブす訳には
いかないから・・

事務所側も
"プライベートな事なので"
と、取材拒否。

だが、行き過ぎた取材や記事に
関しては今後も
名誉棄損の考えは常に
持っている事を明らかにした。

三日もすれば年配の大物俳優が
少女を買っていた事がバレたり、
芸能人夫婦が熟年離婚したとか、

大衆もメディアもそちらの方に
次第に興味を移していった。

俺は暇があればシアの携帯を
鳴らしたが"電波の届かない所"
そんな、淋しい声を聞くばかり。

恩田専務や会長にも一通の
お詫びのメールだけで、
居場所は報せてないらしい。

パスポートは取っていないし、
まして犬連れだから国内には
居る筈なんだけど・・。

もう五日も経っちまったんだ。

妙な事を思い付いてはいないか、
あまりの連絡のなさに俺は勿論
事務所も不安になってきた。


「自殺の名所って呼ばれる所は
だいたいが圏外じゃない・・?」


移動中の車の中、運転中の
マネージャーを後から、ガツン!
ゲンコツで思わずボコる俺。

縁起でもない、
シアがそんな事する訳ないんだ。


「それ以上云ったらコロスよ」


・・18年分だもの、
サイボーグじゃあるまいし、

直ぐにスイッチが
切り替えられなくて当たり前だ。

彼女に取っては・・
それだけ重いものだったんだから。




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