+ missing-link +
民家の細い道へ逃げ込めば
もう追っては来られない。

ドキドキしながら
コテージの裏側から
こっそり戻って来た。

自意識過剰とかって思われる
のがとても恥かしいけど・・

念には念を、フロントに行って
ヒトツ訊ねてみようと決心する。


「あの・・・。」

「あぁ。結城さま、お帰りなさい。
お客様がお待ちになってますよ?」

「は?」


フロント横にあるリビングルーム。
そこをソオッと覗き込めば、
見覚えのないポッチャリ目の後姿。

クル!と、振り向いた
皺の深い笑顔に見覚えがあった。



「よぅ、親指姫。久しぶり。」


「あ・・・! お久しぶりです。
でも・・何でこんな所に?」


「事務所に聞いたンだよ。本人と
直接交渉しろって云われたんでね。」


「え・・!?」



事務所は居場所を知っていた・・?
嘘、なんで・・?


「ひょっとして、さっきのは監督?」

「ハハハっ。逃げやがったな! 」


拉致未遂された事があるので、
ああいうのが怖い。

それがただのマスコミでも怖いけど。

私が監督と呼んだのは・・

カイトさんのPVの時お世話になった、
映像作家でもあり、舞監でもある、
天美監督と云う強面なオジサマだった。


「ここじゃなんだ、甘い物でも
おごってあげるから、おいで。」


フロントに荷物を預けさせて
近くの喫茶店まで一緒に歩いた。


「此処のドラゴンフルーツの
パフェは最高に美味いんだよ。」


どうやら何度かいらしてる様だ。
煙草を手に火も着けないで、
私の顔をジィ~と凄く、見てる。



「交渉って・・なんですか?」

「これ、見て。」



監督がバッグから手渡したものは
ジュードさんが持って帰って来る
台本とよく似てる、いやその物か。



「ソウル・ブルー・・?」

「久々に一本撮りたくなってね。」



ネット・アイドルに恋をした青年の
少々イタイ、悲しい恋愛物語。



「その"あさぎ"って少女が誰か?
って云うと君ばかり浮かンでさ。」


「わ、私・・?」



浮かんだからナニ・・?





< 199 / 332 >

この作品をシェア

pagetop