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"あさぎ"と云う少女は
俺の肌に鳥肌を立たせた。


「・・・・・。」


そして思い出している。
彼女(シア)と坂巻の所で出会い、

そして付き人、
契約上の関係・・。

対人恐怖症で、
いつも俺の背中に隠れて・・。

それが今、
映画と云う枠の中で
生き生きとしている。


( お前の背中にも・・
やっと羽根が生えたね )


嬉しいような、
ちょっぴり淋しいような。

俺はこの映画を観て確信した。
彼女は・・
この世界で生きるべきだと。

引退なんて、とんでもない。

ラストの儚くて美しい映像に
周りは皆、グスグス云ってる。



拒み続けた人口声帯をつけ、
主人公は初めて彼女の声を聞く。

しかも、その台詞は俺達には
聞こえないんだ。

主人公を抱き寄せた彼女は
その耳元で何か言う。

口の動きで
後は想像するしかない。

それを聞いた彼は泣くのを
堪えながら
彼女に愛の告白をする。

それが彼女の云った
言葉のヒントになってる。

それを薄く微笑みながら、
息絶え絶えの彼女は彼の腕の中、
一筋の涙を流してる。

ずっと、ずっと、必死で、
彼はありとあらゆる思いつく
限りの告白をし続けるんだ・・。

そのまま流れていく、
ピアノ演奏が物悲しくていい。


「・・・良かった!」

「シアちゃん最高・・!!」


鼻を真っ赤にした
大の男が4人も居るのには笑う。

みんなウンウン
頷きながら手を叩いた。

さすが監督が
つまらない作品に出るなと
云うだけのコトはあった。

この映画をさし置いて
映画祭に出品される作品が
本当に他にあるのだろうか・・?




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