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こんなあっさりとした
別れもあるものだな・・
と、私は玄関で立ち尽くす。

本当はまだハッキリも
してないくせに・・・バカだ。

腕の中のラフィが
"クゥー"と淋しげに鼻を鳴らす。
そんなに彼が好きなんだ・・?


「ちょっとだけ、
周りを散歩しよっか。」


三月と云えどまだ夜は肌寒い。
犬用のフード付トレーナーを
着せ、リードを着けた。

明らかに何か感じ取ってる
ラフィのご機嫌とり。
エチケット袋を持って
下へ降りてった。

小指ぐらいの小さな尻尾を
プルプル振るって外周を歩く姿。

時々私を見上げ速度を落とした。

まるで、ちゃんと
そこに居るか確認するみたいに。

・・ごめんね。人間は勝手だね。


「シア・ママは
どこにも行かないから・・」


解ってるのかどうか、
ピョーンとハイ・ジャンプ。

そう云ってやらないと何度も
上を見てばかりだったから・・。


「ずーっとラフィと一緒・・」


そう・・そうだよ・・

私だけはずっと一緒だから・・
決して
置いて行きはしないから・・ね。


「・・・・。」


部屋に戻ろうと
エレベーター前で
立っていると男2人、女1人が
中から一緒に降りて着た。


「こんばんわ」


その内の1人である熊谷禅は
苦笑いで挨拶、
千鳥足の2人を引っ張ってる。


「・・・・こんばんわ。」

「あー、シアちゃんだー。
ゼンをヨロシクねー!」

「かわいーワンコぉ♪」


禅以外の2人はへべれけ状態。
"ちょっと待ってて"
彼は私にそう云い、表に
表れたタクシーまで彼らを
見送って戻って来た。


「ごめんね。
あいつ等手が焼けてさ。
今日ね、オーディション
受かったお祝いで部屋で
パーティーやってんの。」

「ああ・・・。」

そうか、シュン役決定は明日
正式公表されると云ってた。


「シアちゃん・・?」


エレベーターに乗り込むと
少し首を傾げて私の顔を覗く。

そんな仕草まで・・似ている。

泣いた痕を見つけられたか。
目線を感じ、ラフィを見る
フリで更に下を向いた。

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