＋ ｍｉｓｓｉｎｇ-ｌｉｎｋ ＋

「警戒しなくてもいいから。
まだ女の子達もいるしね?」


熊谷禅は何も聞かなかった。
ただ背中を軽く押し、


「気晴らしして行きなって。」


そう彼に案内されるまま
隣の部屋に通された。

ドアを開けた途端の賑やかさ
にラフィも驚いてた。

クラブさながらのBGM、
このマンションの防音性の
素晴らしさに音楽関係の人が
集まる訳である。


「サプライズ・ゲストじゃん!」


そう驚いて、何人か残っていた
女性客も大歓迎してくれた。

禅は気を利かせて少し音楽の
音をリモコンで小さくしてる。


「飲み物はコーラでいい?」

「あ・・ええ。」


ソファに"座って"と促され
直ぐにお皿に乗った点心と
レモンスライスの入った
コーラを届けてくれるのだ。


「昨日、大変だったんだね。」


今日はスタッフが居たから
こんな話も出来なかったのだ。

隣に座り、神妙な面持ちで
ロック・グラスを傾け
口に含んでいる。

そして、意を決したかに此方を
向くと怒った様な顔をした。


「彼はさ・・これ以上、君に
何を求めて泣かせたりするの?」


車を知ってるのか、ジュードが
来ていた事を知っていた。

予想もしてなかった質問に
私は困惑の色を露にしたかも。

だから熊谷禅は・・
"ゴメン"と
小さく呟いたのだと思う。


「あれは・・私が勝手に
やった事ですから・・。」

「・・何か納得行かない。」

「え?」


面白くなさそうに襟足を掻く。
顔の中心にシワまで作って。

そんな時だった。
1人の女の人が彼の隣に座って来た。


「あたしの友達でさ、Judeと
寝たって子が居るんだけど、
そう云うアソビは公認なワケ?」

「オイ・・っ!」

「あ・・・いえ・・」


やっぱり・・
皆はちゃんと知ってる。

あんな男を庇ってバカだって・・

そう嘲笑ってる
彼女の瞳の奥の声が見えた。


きっと彼女や世間の人は皆、
私の事、
正気じゃないと思ってるんだ・・。