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あのハスキーな鳴き声の主は
さっきの
顔黒女に違いなかった。
・・だからか。
こうやっていつも
シアに嫌がらせしてるのか?
坂巻の趣味じゃない事は
確かだ。
物音のするランドリールーム。
空いたドア、そっと
壁に持たれて彼女を見てた。
よく耐えられたな・・。
あの駐車場で
あの女を見た時から
これからの
坂巻の予定が解ったんだ。
携帯の電源を
切っちまったって事は
何度か聞かされているんだろ?
そんな時はどうしてたんだ?
アノ最中の
実況なんか聞かされて何も
感じない訳はないだろう。
泣いて飲んだくれるか、
適当な男を見繕って
抱いて貰うか。
そんな所じゃないのか?
「・・・?」
しゃがみ込み、ドラム式の
洗濯機の回転を見つめながら
彼女が小さく口ずさみ始めた。
"黙ってても
明日は来るのさ
眠りたきゃ眠ればいい
お前はお前の
呼吸をすればいいだけ
ずっと見てるさ
忘れないでくれ・・”
スローなバラード、
声が途切れ途切れで痛々しい。
紛れもなく・・坂巻の曲だ。
抱えた膝に埋める顔。
グスッ。
鼻を啜る音が
一回だけ・・聞こえた。
震える小さな肩を見過ごせない。
俺が触れた手に驚いて
彼女がその泣き顔を上げたんだ。
んっ、と唾を飲み込み
手の甲で子供みたいに涙を拭いた。
立ち上がらせて
棒立ちの彼女を抱きしめてやる。
背中をポンポン叩いてる
俺の口からも溜息が盛大に零れた。
「・・違う、
夜と朝の空気を吸わない?」
正直、
迷いがなかったと云えば嘘になる。