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理屈抜きに
直ぐ抱いてやれば良かった。

だが彼女は?
拒んだかも知れない。

何故か
タイミングを逃した気分。


( いや、契約中だ。
拒否はしないだろう・・。)



俺自身はどうなんだ___?

不本意だろ、
こんな風にするのは・・



「結構、寒いですね。」

「本当だ」

「でも・・星が見える・・。」



俺の運転する車で約二時間。
山中湖まで来てた。

急遽知り合いに頼んで
コンドミニアムを
借りれたんだ。

途中、車を降りて背伸びを
しながら夜空を見上げる。

シアは黙って星を眺めて。

俺はそんな彼女の
横顔ばかり見ていて。



「部屋にも
天窓があるらしいよ。」

「ホントですか?」

「うん」



昔、好きだった女の子を
見ているかの・・あんな気分。

打ち上がった花火を見ている
彼女の横顔が
とても美しかった。

だけど今のシアは
手の届く所に居る。

抱きしめてキスをすれば
俺はもう
耐えられなくなるだろう。

もう二度と、
こんな気持ちには
なれないんじゃないか・・?

ああ、俺らしくもない。


「そろそろ行こう、寒い。」

「そうですね。」


湖畔からの風が直に俺達を
吹き晒す。

彼女の肩を
抱いて車に戻ってきた。


「早く温まろうか・・?」


シートに腰を降ろした彼女に
揶揄い半分で
耳元で囁いてみる。


「温泉もあるんですか?」


シアはごく普通に、
何か勘違いした様だ・・。

実にやり難い。




「お待ちしておりました」



到着してすぐ
別棟に立っている部屋へ
案内してもらい、
ラストオーダーで白ワインと
チーズ、クラッカーを頼んだ。

お忍びなのは
案内係も知っている。

慣れたものだ、早々に
用事を済ませて帰って行った




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