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同じ事務所と云う事もあったが
彼は元々、
俺のバックに付く様な
タダの男ではなかったのだ。

その話があった時は"まさか!?"

俺も他の連中も
天変地異並に驚いた。

怪我で休業してるメイン
のギターの代役だから
一時だけの事にすぎないだろう。

それも事務所が
やれと云うなら仕方ない。

それに反対する理由は
俺にはなかった。

そもそも、なんで今
こんな重苦しい空気の中、

この辛気臭い男と、
面を着き合わせて
飲んでいるかと云うと
今日が初顔合わせだったんだ。


話をするのは初めてだった。

若かりし頃、
坂巻のステージでの暴君ぶりは
業界でも語り草で
今でもその異質なオーラは健在だ。

そのお陰かバンド連中も
彼を恐がっていたし。

だから、"俺だけでも"

孤高のギタリストに、
仕事の話は抜きにしてでも
もっと打ち解けたかったんだ。

ギクシャクしてて
良い訳がないんだからって。

ノコノコと着いて
来るんじゃなかったかな?

ちょっと後悔し始めた
そんな時だ。


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