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「そろそろ戻らないと、
那須さ・・ン」


顔を上げたと思ったら
そんな事だ。


言い終わる前に黙らせた。
お酒が効いたのか
奪う唇が熱く感じる。

それに、
思う様に抵抗できなくて
息継ぎに苦労している様だ。

胸元を突っ張って
押し始めたので
身をかわすと自然にズルリ、
その身はマットに崩れた。

慌てて手を着き、
起き上がろうとするが
頭が左右に揺れているのだ。

軽く肩を押しただけでパタ。
意識はあるのに体が
言う事をきかない。

口当たりの良いシャンパンで
酔ってしまったらしい。

上から見下ろす
俺の影になりながら
頼りなく首を振っている。


「ご期待に応えようか?」


酔って抵抗できない女を
ヤッテしまおうだなんて
趣味はない。



そんな事は・・、

AV女優の演技を真に受けて
実践し、女達に影で
"アイツ、ヘタクソ"と
メールでい言触らされてる
テクニシャン気取りの男か、

もしくは、女に
相手にされなくなって早何年?
セックスの仕方も
うろ覚えな中年男とか。

そう言う奴らがやる事だ。


だが目の前で、"イヤイヤ"と
この顔で首を振られたら
どうしても俺のSっ気が
ムズムズしてくるんだ。


「・・外ですよ?」

「俺に風邪をひかせたいの?」

「だったら中に・・あ!
その中じゃありません、
冷た・・い」


冷えた両手を
パジャマの裾から滑らせ
震える胸を撫で摩った。

悪い男だ、そうやって
シアの反応を
いちいち楽しむなんて。

先っちょを指で
触れられただけで
ぷるっ・・、
小さく身を縮ませるんだ。

いかん、
歯止めが利かなくなりそうだ。

手を放し、彼女の横にゴロリ
と寝転ろぶと腰に手を回して
頭を抱えて引き寄せた。

普段する事のない寒さによる、
酔った彼女からの
自然な擦り寄り。


「もう少しだけ・・」


"ずっとこうしていたい"
とは云えなくて。

月は変わらず
大きくそこにある。

俺の呟きに微かに
頷いた彼女を照らしてた。





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