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「オツマミ、どうぞ。」



ナッツの入った皿を置き、
座った俺に薄く微笑む少女。



( 綺麗・・・だ・・? )



近くで見ると、
ますます目が大きくて
真ん丸い黒目が印象的だ。
そして
長く濃い睫毛は本数が多い。



「有難う」

「ごゆっくり。」



溜まった灰皿を取り替えて
静にキッチンの方へと消えてった。



「で・・誰?」


本当はむくむくと起きる興味を
白々しく隠しながら
話のついでの様であるかに訊ねた。



「付き人。要らなかったけど、
何でもするから
雇って欲しいって云うし。」



何でもするから・・か、
危うい物言いだな。

彼も一度は人気を
博したミュージシャンだ。

今だに
憧れられる存在ではあるが
彼女とは世代が違う。

彼の隣に居る女としては
違和感はないが、
少し若すぎるだろう。

だが、なぜこの男が、
彼女を手元に置いたか
解る気がする。

そう、同じ匂いがした。

あのコの・・、
どこか浮世離れした雰囲気が
気に入ったのかも知れない。



「気に入ったなら別に、
お持ち帰りしたっていいよ。
送らなくても
ウチには戻ってくる。」


「・・・!?」



耳を疑う。

じゃなきゃ、
深酒の冗談だと思った。

彼女をまるで
ジブンの所有物みたいに。


"ウチには戻ってくる"


その言葉に
軽いショックを受ける俺。
だが顔には出せない。

どうやら2人はここで
一緒に生活してるらしい。

それにしてもこの言い草だ。


彼は俺以外にも
彼女をこんな具合に
テイク・アウトさせている?





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