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放棄
「・・ええ、居ました。
でも、泣き疲れて
眠っちゃいましたよ。
落ち着くまで
その話はしないで欲しいな。」
携帯を切ってから、
彼女をおぶってエレベーターを
降りて来た。
表に待機していた車に移して
家に連れ帰る。
『彼女には・・人前に
出る仕事は無理ですよ』
坂巻は
社長にそう云ったそうだ。
確かに人見知りが激しすぎる。
まるで坂巻を見習うかの様に
無口だし、あまり表情も
変えない。
あの雰囲気はある種、
独特のものがあった。
( 化粧も
落としてやらないとな。 )
ベッドに横たえてやり、
首飾りを外す。
よく見ると
傷口は薄く膨らみがある。
まだ新しいものかもしれない。
何となく解っているのは・・、
この傷と、心まで傷付けた
のではないかと云う事。
そしてイマイチ理解できない
のはヤツがどうやって
彼女の教祖に成り上がった
のかと云う事だ。
・・・あと1週間か。
それも本当はこの少女に
関係ない。ただ彼女が、
義理を通してるだけだ。
元々、俺は彼女に寄生する
ダニみたいな男を引き剥がして
やりたかっただけの筈・・。
♪~♪~
携帯が鳴り出して
慌てて部屋を出た。
電話はサクヤからだ。
『強行だな、シアは大丈夫?』
もう既に
知っている様子だった。
坂巻から連絡がいったらしい。
予約がダメになったせいか、
いつに無く怒り口調である。
「彼女にイメ・キャラの仕事が
決まった時から社長は
考えてたみたい。」
『・・・他にやり方があった
だろう? どうして・・
彼女を壊す様な事を・・!』
珍しく彼が怒りを露にしてる。
俺は驚きで
次の言葉が出なかった。
『放棄は絶対に許さない。
責任は必ず取ってくれ。』
それだけ冷静になって
云い残し、サクヤは一方的に
電話を切ってしまった。
彼は俺より彼女を知っている。
だが、
壊すだの、放棄だの・・
機械を連想させた。
翌朝が不安にもなる___ 。