+ missing-link +
「・・さっきは本当に有難う。
空港に引き返されたら
どうしようと思ってた。」
「いえ・・そんな・・
こちらこそお忙しいのに
申し訳ございません。」
「お名前、入れましょうか?」
別に正体も隠してなかったし、
さっきの客室乗務員に
内緒でサインを
書いてから飛行機を降りた。
待っていたシアの荷物を
今度こそ取り上げて背中に
片手で担いで歩き出す。
その頃には彼女も落ち着いて
肩を軽く押されて
隣を歩き始めてた。
申し訳なさそうに、
"すみません"と呟く声。
思わず片手がちっちゃい頭を
クシャクシャにした。
"いいよ"と
許す言葉とは裏腹に。
顔面に降りていく俺の魔の手。
彼女がエスカレーターに一歩、
足を乗せるのを待っていた。
「あっ!」
背後の頭上から、
真ん中の指を使って鼻の頭を
グイっと吊り上げてやった。
「なにフるんですか、
イヤれす!」
「ふっふっふっ。降りるまで
ずっと"ナオコ顔"の刑だ。
ほぅら、大いに笑って貰え!」
「はなひへーッ!」
「まだまだ・・!」
鼻を上に吊り上げられ
ブザマにふがふがと苦しそうに
藻掻いてるシアを反対側の
エスカレーターで行き違う人が
クスクス笑って見て行く。
面倒掛けた罰だ。
と、心の中で舌を出してた。
降りた途端ぱっと放して
スタスタ知らん顔で
先に歩き出した。
待っていたタクシーのドアの
前で振り向き、とうとう
噴出して笑っちまったが。
「への字口してないで
早く乗って。」
予定より早めなので先に
ホテルへチェック・インする
事にしたのだ。
後部シートで足を組み、
予定表を見ながら
彼女に確認する。
「部屋は別々だったんだ」
「当たり前です、あ・・
あれですね・・え!? あの!」
海辺の高層の高級ホテルを
通り過ぎ、タクシーは市内
へと向って走り続ける。
そりゃ、当然だった。
俺が運転手に黙って
メモを一枚渡しておいたから。