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「他にもいっぱい見てた人は
いたのに、誰も助けてくれ
なくて・・彼だけが・・。」



・・・嫌な事まで
思い出させちまった。

"もういいよ、悪かった"

そう云いながら
肩を抱きしめてやる。

だが彼女は云い続けた。



「彼・・私の事、
覚えてたんです。私・・まだ、
首に包帯巻いていたから。」

「・・・え?」

「病院抜け出して・・
フラフラしてたんです。
そしたら雨が。」



土砂降りの雨。

たまたま目に入った
ライブハウス、
衝動的に
当日券を買って中に入った。

そこでたまたま
歌っていたのが坂巻孝介で
彼の歌詞に・・泣いたそうだ。


「多分・・ぐしゃぐしゃに
泣いてしまってたから
目立ったのかもしれません。
その数時間後の事だった。」


その時、
警察にも着いて行って懸命に
事情を説明した・・だが、
父親が彼女を迎えに来て
無理やり病院に連れ戻された。



「・・聞いてもいい」

「________ ええ。」


「その、傷は・・?」



彼女は黙って腕の中、
いつも着けている
太い黒のチョーカーに
手を触れる。



「・・・・・。」

「無理するな」

「・・私は・・母の、
浮気相手の子なんです。
だから父や兄とは
血が繋がってなくて。」

「・・・うん。」

「母は父に当て付けのつもり
で私を生んだそうですよ、
そう云ってた・・。」



そんな母親がいるってのか?

震える声、更に語る彼女を
力強く抱く。



「兄は・・いじめられっこ
だったけど・・私には凄く
優しくていつも構ってくれて
よく手を引いて遊びに連れ
出してくれたり・・。」



なぜか、その時
シアの体が尋常でない
震え方をした。

嫌な予感。



「シア、もう止せ。
云わなくていい。」


「・・学校で、上級生に
"お前、宮田の妹か?"
って聞かれたの・・。
皆、ニヤニヤ笑って・・」

「シア・・・!!」



訴える様に俺を見上げて云う。
彼女の目にはその時が今も
映っているのか?


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