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俺の服を鷲掴みに
昨日のあの、
飛行機の時みたいだった。

覚醒させようと、
シアの体を揺さ振った。
だが、なおも震えは
止まらず言葉を続ける。


「そしたら、家に・・、
来たの、あの人たち、
あの日、お兄ちゃんとっ・・
んむっ・・!」



もういいんだ・・。
未だ乾かぬ傷跡を
無理に剥がさないでいい。

キスの最中、彼女のツウと
流れて落ちる涙。
サクヤの忠告を
聞いて置けば良かった・・。



「・・・落ち着いた?」



どのぐらい経ったか。
ようやく彼女の
震えが止まったのだ。


一頻り抱きしめて放してやり、
頷いたのを確認してから額に
キスを落とす。



「ごめんなさい、私・・。」

「俺がいけなかった、帰ろう。」



顔色が本当によくない。
青くなんかない、
通り越して真っ白なんだ。

次の仕事まで
まだ時間があった。
家で少し
休ませた方がいいと思って。







「・・何処まで知ってる?」



その日の夜、
携帯で連絡を取った
サクヤは俺の自宅に来ていた。

彼は那須の出してくれた
コーヒーを見つめた後、
リビングのパソコンを指差す。

本人から聞いた訳じゃない。


「昔の噂だけだよ。
大人しかったとか、
可愛い子だったとか。ただ・・
あれは"兄貴"が悪いんだって。」

「・・いじめられっこの?」



好みの味に変えたコーヒーを
かき混ぜながら彼は頷く。

有名になって行くと確かに
そんな昔話がネット上で
飛び交うものだ。
例えすれ違っただけでも
話題にする。



「某掲示板なんかでは、昔、
彼女に握手して貰ったって
ヤツがいてね。
他の連中にに紛れて
色々聞いたんだ・・。」



"お兄ちゃんのお友達?
じゃあ、
史亜とも仲良くしてね"



「別に友達でもなかったけど、
彼女見たさにウチに遊びに
行ってた連中がいたって。」


「シアは・・兄貴を
気遣ってたんじゃない?」



頭が悪い子じゃない。

でも・・今じゃ
考えられない積極さだな。





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