鎌倉物語
 

 賞の講評には歌を添えた。

それが素人に関わらず画の審査に携わった、私に出来る唯一の処弁だと思った。


《飛び翔けり 源氏の鳥は 見えねども かくもよろしき 恋ふる絵の島》



 後日、私の歌は地元の新聞の隅に絵と共に載せられた。

今回のこの『神奈川の風景コンクール』は、紙面に紹介され、好評を博したそうだ。


 主催者である新聞社から、購読者の皆さんからたくさんの葉書を頂いたと、私にお礼の葉書が宛てられてきた。

私の歌の意味を問う手紙や電話も多くあったそうで、どうも「そのままの意味です」と返していたらしい。

だから手紙には、実際に紙上でもう一度今回のコンクールの総評と短歌の説明をしてくれませんか、と頼まれていたが、これには私も「そのままの意味ですから」と返した。

また手紙の最後の方に、この分だと慣行にしていく予定だから翌年もどうですか、と書かれていたが、これも「そのときは是非とも応募の方で」と断った。






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