鎌倉物語
 

 審査をするのはもう十分である。
素人一人、幾分疲れてしまった。
画家の領域で作家が物言うことを、余り歓迎されなかった。
専門の諸先生方は、より細かな見方をしようとして、大きなものを見てはいなかった。
私とて何が出来ただろう。

しかし翌年開かれたコンクールに、再び審査員に作家が選ばれていたのを見ると、私という今回の作家の人選はタイムリーなものであったのであろう。

選ばれた作家には同情したが、第三回、第四回と以後ずっと審査員になり続けているのをみると、私の様な感は起きなかったのかもしれない。



こうして私とコンクールとの間の関係は、一回目の授賞式を境に終わった。

私は、審査員特別賞で車椅子に引かれた高校生に賞状を渡し、そこで役目を終えた。

檀上を包んだ無数の拍手が、晩秋の暮れにほんのりとした温かさを感じさせた。







【第ニ節 終】


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