オレンジ
「鈴ちゃん、男バスのマネージャーやってるんだね。」
豚肉と白菜の煮物に箸をつけながら、涼輔が優しい笑顔で鈴に聞いた。
「はい。ご存知だったんですか?」
「へぇ!マネージャーなんだ、リン!」
隣で菜の花のお浸しを頬張りながら光輔が話に入る。
もうすっかりお馴染みの、いつもの夕食風景だ。
「うん、評判だからね。」
「?」
「だろ?洋輔」
「知らねぇよ、んなこと」
興味なさそうに洋輔が答え、早々と食事を終え自室に引き上げる。
そこから何となく話は切り替わり、また他愛もない話で食事は進んだ。
評判、というのは男バスのマネージャー2人組だ。
長身で、目鼻立ちがくっきりした大人びた顔の蘭。さらさらの黒髪のロングヘアで、口元のホクロが色っぽさを放っている。しっかりしていて落ち着いた雰囲気があり、美人だと評判になっている。
対する鈴は、小柄で色白な体型に、目はこぼれそうな程大きく黒目がちで、笑うと片頬だけえくぼができて愛らしい。髪はふわふわしたボブで、守ってやりたくなる気持ちにさせる。可愛いと評判になっている。
つまり男バスのマネージャー2人組は、校内レベルで上玉だ、と評判になっているのである。
当の本人達は、全く気付いていないのだが…。