オレンジ
「ね、リン」
「ん~?」
ボール磨きをしながら、蘭が口を開いた。
練習後の仕事だ。男バスメンバーは、とっくに上がっている。
煌々と明かりがついた体育館で、蘭と2人、話をしながらボールを磨く。
いつもの習慣だ。
「憧れの先輩って、結局誰なの?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「聞いてないわよ、全然。」
あらら、言ったつもりだったわい。
「木岡先輩。」
ふにゃりと笑いながら答えると、
「あぁ…センターの。」
と、振っておきながら興味なさそうに蘭が答える。
「蘭は、彼氏いるの?」
ランランは呼びにくくなってすぐやめた。(2週間で)
「うん。」
事も無げに、答える。
「うっそ、マジで!い~い~なぁ~」
羨ましがる私を見てプッと笑い、高校は別だけどね、と蘭が言う。
「追っかけなかったの?」
「男子校に?」
「おや、それは無理だな。」
「バスケの強豪校なの。だから、バスケに関わってたら会うこともあるかと思ってね」
と、微笑みながら話す蘭はとても綺麗だった。
こんな風に恋ができたら素敵だな、と素直に思える。
蘭に後ろから抱き付いて、にへっと笑うと、蘭が笑って私の頭を撫で、さ、片付けよ、と立ち上がる。
蘭は、素敵だ。